動物と自然日本語
モモとおつきさまの丘
モモは、なんでものぞいてみたくなる子猫でした。
くつの中も、ゆきの穴も、ポストのすきまも、のぞかないと気がすみません。「なんだろう、のぞいてみよう」が、モモのくちぐせです。
水曜日の朝、モモはゆきの丘へかけていきました。水曜日には、おつきさまが丘におりてきて、みがいてもらうのです。この町では、だれもふしぎに思いません。アナグマのおじいさんが、大きなぬのでごしごしやっています。
丘では、みんながそりですべっていました。モモもすべりたくてたまりません。でも、モモのそりは、きのう、まっぷたつにわれてしまったのです。
「どうしよう」
モモは、大きなはっぱにのってみました。びりっ。はっぱはやぶれました。
つぎは、かごのふたにのってみました。くるくる、くるくる。目がまわって、モモはころんとゆきにたおれました。
「だめだあ」
そのとき、おじいさんのうしろに、ゆきのこんもりが見えました。
「なんだろう、のぞいてみよう」
ゆきをそっとほると、まるくて、つるつるの、大きなふたが出てきました。みがきこの缶のふたです。
「おじいさん、これ、つかっていい?」
「ああ、いいよ。いま、わしはいそがしいんじゃ」
おじいさんは、おつきさまのおなかをごしごしみがいています。
モモは、ふたをゆきの上におきました。ちょこんとのって、しっぽをくるり。
すーっ。
ふたは、ゆっくりうごきだしました。すーっ、すーっ。だんだんはやくなります。ゆきがきらきら、ほっぺにとびました。
ぽすん。
丘の下で、ふたはとまりました。モモは、ゆきの上にぺたんとすわったまま、丘をふりかえりました。ぴかぴかになったおつきさまが、まぶしくひかっています。
モモののどが、ごろごろ、ごろごろ、なりはじめました。