動物と自然日本語
ハルとてんとう虫
「ハル、てんとう虫が庭にいたよ」というおばあちゃんの声を聞いて、ハルは長ぐつをはいて庭へとび出した。
ハルは、てんとう虫に会いたかった。まだ一ども、手にのせたことがないのだ。
庭のすみには、風が向きをかえるたびにひとりで鳴る風りんがさがっている。ちりん。この庭では、だれもふしぎに思わない。
ハルは黄色い花の上を見た。
「いないなあ、いないなあ」
つぎに、大きな葉っぱの上を見た。
「いないなあ、いないなあ」
ハルはほっぺをふくらませた。おばあちゃんには見えたのに、どうしてハルには見えないんだろう。
ちりん。風の向きがかわった。葉っぱがくるりとひっくり返って、うらがわが見えた。
「あれ?」
ハルはしゃがんで、そうっと下からのぞいてみた。上からじゃなくて、下から。
いた! 赤くて小さい丸が、葉のうらにぴたりとくっついている。そのまわりには、ちっちゃな緑のむしがならんでいた。てんとう虫は、それをもぐもぐ食べていたのだ。風がふいても、ここならとばされない。
ハルは指をのばした。てんとう虫は、ぽとんと指にのった。ちくちく、こそこそ。
「くすぐったい……はっくしょん!」
ハルのくしゃみで、てんとう虫はころりとひっくり返った。
「わあ、ごめんね!」
てんとう虫は足をじたばたさせて、また起き上がった。
それから、指のさきまでのぼっていった。ハルは息をとめて見ていた。
「ひとつ、ふたつ、みっつ……ななつ」
せなかの黒い点は、ぜんぶで七つあった。
ちりん、と風りんが鳴った。てんとう虫は、ハルの指の上で、あったかい日なたに丸くじっとしていた。