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家族とおうち日本語

あかないとだな

ハルは、あたらしいおうちの小さなとだなに、たからばこをしまいたかった。

たからばこには、どんぐりと、あおいビーだまと、まえのおうちのかぎが入っている。

「ここにしまおう」

ハルはとだなの戸をひっぱった。でも、あかない。

「あかないなあ」

こんどは、おしてみた。やっぱりあかない。

「あかないなあ、あかないなあ」

おかあさんが、だんボールをかかえて通りかかった。

「あら、どうしたの」

「この戸、こわれてる」

「どうかなあ。ふしぎな戸かもしれないよ」

おかあさんは、そのまま行ってしまった。

ハルは、戸をじっと見た。それから、耳をくっつけてみた。

戸のむこうから、すうっと風の音がする。

「あれ? むこうに、道があるのかな」

ハルはろうかに出た。ろうかの壁に、もうひとつ、小さな戸があった。ここは、すっとあいた。

中はせまくて、くらくて、ほこりのにおいがする。ハルは、たからばこをだいて、はっていった。

いちばん奥で、ハルは戸をうんとおした。

ぎいっ。

戸が、へやのほうにひらいた。ハルはころんと外にころがりでた。

あたまに、ほこりがのっている。

「ただいま!」

ハルがいうと、おかあさんが、ふきだした。

「おかえり。そっちから来たの」

「うん。この戸は、むこうからしかあかないんだよ」

ハルは、とだなの中にたからばこをおいた。ぴったりだ。

まどの外が、だいだい色になってきた。空のくもが、ゆっくりうごいて、かたちをかえていく。

ひとつのくもが、みるみる、まえのおうちのやねになった。けむりだしも、ちゃんとある。

「きのうのくもだね」

おかあさんがいった。

ハルは、まどのそばにすわった。くもの、まえのおうちが、ふわふわとゆれて、うすくなっていく。