季節と天気日本語
ひっくひっくのお団子
お盆の上で、お団子の山が、ひっく、ひっくとゆれていました。
ミオは目をまるくしました。お団子がしゃっくりをしているみたいです。
「ミオ、お湯がわくまでに、お団子を縁側にならべてね。今夜はお月見だからね」
台所から、おばあちゃんの声がしました。やかんが、ことことと言いはじめています。
ミオは、お月さまに見てもらいたいのです。お団子は十五こ。てっぺんまで、きれいに積んで、いちばんりっぱな山にしたいのです。
ところが、数えてみると、十四こしかありません。
「あれ? ひとつ、たりないよ」
ひっく、ひっく。
また、へんな音がしました。
ミオは、お盆の下をのぞきました。いません。かごの中も見ました。いません。ざぶとんをひっくり返しても、いません。
ひっく、ひっく。
音は、あっちからするようで、こっちからするようでした。
台所で、やかんが、しゅんしゅん鳴りはじめました。もうすぐ、わきます。
ミオは、山のまわりをぐるっとまわりました。すると、白い山のうしろで、白いものが、ぴくっと動きました。長い耳です。
「うさぎさん!」
小さなうさぎが、ほっぺをふくらませて、ひっくと飛びあがりました。口のはしに、お団子の粉がついています。
「食べちゃったのね。おなか、すいてたのね」
うさぎは、ひっく、と返事をしました。
「かえして」と言っても、お団子はもう、うさぎのおなかの中です。ミオは台所へ走りました。おばあちゃんの棚にも、お皿の上にも、お団子はありません。
でも、おわんの中に、まるめる前の白い生地が、ほんの少し残っていました。
「これだ!」
ミオは、手のひらでくるくる、くるくるまるめました。ちっちゃなお団子が、ひとつできました。
縁側にもどって、山のてっぺんにのせます。ひっく。うさぎのしゃっくりで、お団子がころんとゆれました。ミオは、あわてて手でおさえました。落ちません。ちょうど十五こです。
ぴーっ! やかんが鳴りました。
空に、まんまるのお月さまがのぼってきました。てっぺんの小さなお団子は、うさぎのしっぽみたいです。
ミオのとなりで、うさぎが、ひっく、と小さく言いました。それから、もうひとつ、ひっく。そのあとは、しんと静かになりました。