コンテンツへスキップ

季節と天気日本語

ちいさなたねとハル

ハルは、せかいでいちばんちいさなたねを、ポケットにもっている男の子でした。

ハルは、そのたねを、小川のむこうの、日のよくあたるところにまきたいと思っていました。

「あそこなら、きっとおおきくなるよ」

この村では、みんなのかげが、三歩おくれてついてきます。おひるになると、やっとおいついて、足もとにぴたっとくっつきます。だれもふしぎに思いません。

ハルは、小川のまえに立ちました。ひとまたぎでは、こえられません。

ぴょん。

ひとあし、たりない。かたあしが、ぱしゃっとぬれました。

「もういっかい」

ぴょん。やっぱり、ひとあし、たりません。

それなら、たねをなげよう。ハルはたねをつまんで、えいっとなげました。でも、たねはちいさすぎて、むこうのくさのなかにきえてしまいました。

「あっ、たね!」

ハルはあわててポケットをさぐりました。もうひとつのたねが、すみっこにのこっていました。ハルはほっとして、ぎゅっとにぎりました。

そのとき、一ぴきのありが、ぱんくずをかついでやってきました。ありは、小川にわたしてある木のはしを、とことこわたっていきます。ありのおうちは、むこうぎしにあるのです。

ありは、ハルのことなんて見ていません。ぱんくずをはこぶのに、いそがしいのです。

ハルは、ありを見ていました。

「そうか。わたれるものを、おけばいいんだ」

ハルは、にわにあった板をはこんできて、小川にわたしました。

ひとあし、たりない。板のさきが、ぽちゃんとおちました。

ハルは、もっと長い板をさがしました。ひきずって、よいしょ、とわたしました。こんどは、むこうぎしにのりました。

ハルは、板の上をそろそろとあるいて、むこうがわにつきました。

ゆびで、土にちいさなあなをあけました。たねをそっとおいて、土をかけます。

「ちいさい、ちいさい、たね。おやすみ」

そこへ、三歩おくれていたかげが、ようやくおいつきました。かげは土の上にそっとのって、ハルといっしょに、あたたかくなりました。