勇気とこわいもの日本語
押し入れのごそごそ
押し入れは、ハルの家の廊下のつきあたりにありました。
ハルは五さいです。今日は、おばあちゃんのお誕生日です。ハルは、赤いリボンをかけた絵を、押し入れの中にかくしておきました。ごはんのあとで、「はい、どうぞ」とわたすのです。
おばあちゃんが居間にすわったとき、押し入れから音がしました。
ごそごそ、ごそごそ。
「あら、なんの音かしら」
「しーっ。なんでもないよ」とハルは言いました。
ハルは、大きなせきをしました。「ごほん、ごほん!」
ごそごそ、ごそごそ。音は止まりません。
つぎに、大きな声で歌いました。「ぞうさん、ぞうさん」
「ごきげんね」とおばあちゃんは言いました。それでも、ごそごそ、ごそごそ。
ハルは、じっと考えました。ふすまのすきまから、赤いものが、ひらひらと見えます。リボンです。ひとりでには、ゆれません。
「だれかいるんだ」
ハルは台所へ走って、ミケのごはんの箱をふりました。かしゃ、かしゃ、かしゃ。
「ミケ、おいで」
ふすまが、すうっと開きました。出てきたのは、ミケでした。頭に、赤いリボンのぼうしをのせています。ミケは、ふかふかのふとんの上で、ねていただけなのです。
絵は、ミケの下で、ちょっとだけしわしわになっていました。
おばあちゃんは、手をたたいて笑いました。
「まあ、すてきなぼうし!」
ハルも笑って、絵をさし出しました。
「おばあちゃん、おたんじょうび、おめでとう」
ミケはおばあちゃんのひざにのって、ごろごろ、ごろごろ、のどを鳴らしました。