友情とやさしさ日本語
ひとつぶのどんぐり
「ミナちゃん、きしゃをかして」
こぐまのタロが、うさぎあなの入り口で言いました。
ミナは、うれしくなりました。赤い木のきしゃは、ミナのいちばんのたからものです。タロは、つみ木でトンネルをつくったところでした。きしゃを走らせたくて、来たのです。
「いいよ。ちょっとまってね」
ミナのあなには、トンネルが五つあります。ミナは、ひとつ目のトンネルに入りました。きしゃは、ありません。ふたつ目にも、ありません。
みっつ目のおくに、赤いものが見えました。
「あった!」
でも、それは前の車だけでした。うしろの車が、どこにもありません。
「半分しかない」
ミナは、しょんぼりしました。
「まだ?」と、タロの声がします。
「もうすこし!」
ミナは、よっつ目のトンネルに走りました。ありました。くつしたが、いっぽんだけ。いつつ目のトンネルは、まっくらで、なにもありませんでした。
ミナは、前の車とくつしたを、じっと見ました。
「そうだ」
ミナは、くつしたにひもをつけて、前の車のうしろにつなぎました。ながくて、ふにゃふにゃの、へんなきしゃになりました。
「おまたせ。これでもいい?」
ミナは、ドキドキしながら言いました。
タロは、目をまんまるにして、それから笑いました。
「くつしたの車だ!」
タロは、きしゃをそっと、つみ木のトンネルに入れました。
ごろごろ、ごろごろ。
前の車は、すぐに出てきました。でも、くつしたは、ひっかかったままです。
ぽんっ。
ひもがひっぱられて、くつしたがとびだしました。つみ木のトンネルの中から、もうひとつ、ことんと音がしました。
赤い小さな車が、ころりところがり出てきました。
「あっ、うしろの車!」
ミナとタロは、顔を見あわせました。
それから、ふたりはきしゃを走らせました。ごろごろ、ごろごろ。くつしたのしっぽが、ゆらゆらゆれました。